意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「スロパガンダ」です。
国民投票など、大きな判断を左右する脅威
「スロパガンダ」とは、「スロップ」と「プロパガンダ」を組み合わせた造語。「スロップ(slop)」とは汚水や残飯の意味で、ネットスラングでは「生成AIで作られた大量かつ低品質なコンテンツ」を指します。スロップを用いたプロパガンダ、AIによる情報汚染のことを「スロパガンダ」と呼び、世界的に問題になっています。
今、世の中にスロパガンダが溢れています。エンタメコンテンツとして楽しむ分にはいいのかもしれませんが、政治家の真実ではないメッセージが、スロパガンダによって多言語に翻訳され世界に拡散すれば、国の判断や発言の国際的評価を左右します。戦争は誤解から始まるケースも多いですから、とても恐ろしい状況なんですね。
高市首相は現在、憲法改正に向けて強い意欲を示しています。憲法を改正するには、衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成を得たのち、国民投票で有効投票の過半数の賛成を得る必要があります。しかし、スロパガンダが広がっている中での国民投票はバイアスがかかり、非常に危険だと憲法学者は警鐘を鳴らしています。
2月の衆議院選挙で、高市首相が出演する動画の再生回数が1億回を超え話題になりました。それにはかなりの金額がつぎ込まれたのでは? ともいわれています。一方の主張だけが、大金を投入することで広く拡散されるのは、フェアではありません。今後は生成AIによって、低コストで情報の拡散や世論の操作が可能になるかもしれません。国民一人一人が自由に判断しているつもりが、毎日大量の偏った情報を浴びることにより、ある種の洗脳状態に陥るかもしれない。これは民主主義にとって大きな脅威です。
スロパガンダに対抗するには、立場やバックグラウンドの違う人同士が、リアルな場で話す機会を増やすしかないと思います。自分一人で考えないで、日常的にいろんな考えの人たちと直接対話をし、意見を交換しながら、一緒に考える癖をぜひつけましょう。メディアも、国民投票のような大きな判断を要する時には、ビュー数や視聴率稼ぎに走らず、対話の場を広く開くことに注力するべきだと思います。
五月女ケイ子解読員から一言

最近、トランプ氏の映像がAIに見える五月女です。これから先もっと、何が本当で嘘なのかわからなくなりそうで怖いです。本当に信用できるのは「生」だけですね。人間が本当のことを言い合う世の中にならなければ、何も信用できなくなってしまいます。
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2490号(2026年4月1日発売)より



























