多くの人を虜にする、ポップで可愛く、そしてオリジナリティ溢れる世界観はどのように作られたのか。『キャンディーカリエス』が生まれたスタジオにお邪魔して、監督の見里朝希さんにお話を聞きました。


Profile

見里朝希

みさと・ともき 東京都出身。東京藝術大学大学院の修了制作作品『マイリトルゴート』(2018)が国内外で注目を集め、数々の賞を受賞。監督作に『PUI PUI モルカー』、Netflixシリーズ『My Melody & Kuromi』がある。

プラバンという素材の、アクセサリー的可愛さ

キャラクターごとに、大小さまざまなパーツが整理されていて、目だけでも10種類以上ある。

専用の道具で、カリエスを少しずつ動かす。集中力が欠かせない!

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『キャンディーカリエス』の始まりは、2021年。YouTubeにて220万回以上再生され、大きな注目を集めた見里さんのストップモーションアニメ『Candy Caries』を、キュートでポップにパワーアップさせた。

「パイロット版は、僕自身が影響を受けた海外アニメの雰囲気を踏襲していました。TVアニメ化するにあたって、プラバンという素材のアクセサリー的な可愛さを前面に押し出したいと思い、デザインを刷新。まず、子どもでも描きやすいキャラクターデザインを目指しました。人の記憶に残るものは、三角や丸といった幾何学図形で構成されていると本で読んだことがあり、アメのほっぺたを大胆な円形にするなど、シンプルかつ丸みのある造形で可愛らしく。アメの等身に合わせてカリエスも親しみやすさをプラスしました。痛みを象徴するキャラクターはともすれば嫌われてしまうので、触覚を記号的な矢印にしてわかりやすく、服やビジュアルは可愛さやおしゃれさを追求しました」

『PUI PUI モルカー』の羊毛フェルトに続いて、『キャンディーカリエス』も手作り感のある素材が魅力。インスピレーションの源は、幼少期のときめきだそう。

「プラバン作りに夢中になった幼少期を経て、大学院生時代にプラバンやアクリルといったハンドメイド感のある素材で制作してみようと思い、『Candy.zip』という作品を作りました。その経験から、透明のプラバンは分厚いほど可愛いと学び、UVレジンでぷっくりと。ただ、可愛らしい見た目に反した意外性のある動きも取り入れたかったので、3000種以上のエフェクトやパーツを作り、目だけでも大小さまざま用意しました。対して表情は必要最低限に。あえて眉毛をなくして感情を読めなくすることで、視聴者の想像の余地を残しました」

そもそも、擬人化された虫歯が主人公という設定からユニークだが、どこから着想を得たのだろうか。

「個人的にモチーフとしての“歯”に惹かれるところがあり、学生時代から虫歯を擬人化した作品を創作していました。振り返れば、自分の手掛けてきた作品は口が大きく動き、体内の表現を入れがち。アニメ専門チャンネル「カートゥーンネットワーク」で放送されていたアニメ『おくびょうなカーレッジくん』は、ワンシーンでタイトルを特定できるくらい繰り返し見た教科書的存在で、豊かな表情は無意識に影響を受けていると思います。アメの口から砂利やビーズといった多様な素材が出てくるところや左右非対称な口のデザインなど、動きやディテールにおいて、クラシックカートゥーンの要素を参考にしました。物語としては、親子モノという要素も。子どもができると自分の時間が少なくなり、振り回されるという状況はシチュエーション的に似ているのではないかと、物語を構築しました」

どこで止めても絵になるビジュアル作り

ストップモーション専用スタジオ。1人のアニメーターが1話を担当し、登場人物が多いと1日で1秒分しか撮影できないことも。

レイヤーになった複数のガラス板にパーツを置き、真上から撮影。照明の反射やホコリもあえて残して手作り感を見せているという。

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ときには、アニメーターの思いつきで隠れキャラや異素材を忍ばせることも。遊び心を気軽に取り入れられるストップモーションの良さを活かしながら、視聴者を飽きさせない工夫を詰め込んだ。

「画面のレイアウトは毎作大事にしています。今回の作品は平面的なので、グラフィックデザインのような画作りを意識して、どのシーンで止めても絵になるように心がけました。キャラクターごとに色のテーマを設け、1カットの色みの構成や配置も正確に。たとえば、第1話の歯医者さんでは床の市松模様に合わせて平行に椅子を配置しています。また、プラバンを熱で曲げたり立体の建物を入れたりすることで、絵のバリエーションを作り、見ている人を飽きさせないように。大量にコンテンツが流れてくる時代だからこそ、見せ方の工夫が大事になります。たとえば、動きをちゃんと見せたいので会話の量をなるべく削ってテンポよく。3秒以上の静止画をNGとして、かつ6秒以内に物語が進展する要素を入れることをチームで共有しました。お気に入りは第11話です。序盤は母と娘の関係にフォーカスした話が多いのですが、後半に進むにつれて好き勝手させてもらい、徐々に狂気的に(笑)。第11話はホラー映画のテイストになっています」

幼少期に夢中になったものが、作品に活きているという見里さん。「ハンドメイド感は時代を超えて、愛されるはず」と話す。

「AIが身近になり、それなりのクオリティの映像を誰でも作れるようになったからこそ、人の手で作られた作品の魅力はより高まっていくと思います。本作ではキャラクターのぷっくりとした立体感を楽しんでもらいつつ、アクセサリーとして身につけたくなる小物作りにも力を入れました。真似をしたくなるような、視聴者の創作意欲が掻き立てられる作品になっていたら嬉しいです」

information

『キャンディーカリエス』

毎週水曜日、23時56分から『よるのブランチ』(TBS)内にて放送中。放送後の深夜25時より、キャンディーカリエス公式YouTubeほか、Prime Video、U-NEXTなど各種配信サイトでも配信。第1話から見ることができる。

©︎Tomoki Misato/WIT STUDIO/トゥースフェアリーズ

取材、文・羽佐田瑶子

anan 2497号(2026年5月27日発売)より
Check!

No.2497掲載

ときめきカルチャー 2026

2026年05月27日発売

今、胸をキュンとときめかせるモノ・コト・ヒトの最前線を集めた特集。ぷくっとしたプラバンの素材感に魅了される、話題のストップモーションアニメや白熱のオーディションコンテンツなどをピックアップ。それぞれの魅力に迫ります。

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