5月29日から上野の森美術館でスタートする「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」。世界的な画家、フィンセント・ファン・ゴッホの歴史をたどる本展は、その画業全体を2期にわたって紹介。1期目にあたる今回は、故郷オランダからパリを経て南仏のアルルに移り住むまでの前半生で描かれた作品を展示する。


挑戦と希望。ゴッホの画業をたどる第一章が始まる

鮮やかな色彩とうねるようなタッチ、独自の作風で世界中で愛される画家フィンセント・ファン・ゴッホ。本展はその画業全体を2期にわたって紹介する展覧会の1期目にあたり、故郷オランダからパリを経て南仏のアルルに移り住むまでをたどる。

「いろいろな刺激を受け、吸収しながら自分は何を描きたいのか、どう描きたいのかを模索しながら、それを楽しんでいた時期だと思います」

と上野の森美術館・学芸員の斎藤菜生子さん。タイトルにもなっている《夜のカフェテラス(フォルム広場)》はこの時期の集大成。本国オランダでは国宝級の作品だという。「それを描くまでの試行錯誤や挑戦に注目してみるとおもしろいのではないでしょうか」

黄色と青のコントラストが美しい。夜、実際の風景を前に制作され、星の位置も忠実に描かれている。

ゴッホの画家としての活動はわずか10年間。本展では最初の5年あまりの間に起きた作風の変遷を見ることができる。例えばオランダ時代は黒、グレー、くすんだ茶色を中心としていた色調が、パリに移るとはっきりと変化する。

オランダ時代の代表作である同名作品のイメージを伝えるために作られたリトグラフ(銅版画)。

「色彩論に関心を持ち、補色を探究したり、さまざまな筆のタッチを試したり。モチーフもレストランやカフェなど都市空間を描くようになり、色彩も明るくなっていきます」

パリでは同時代の画家たちと密に交流し、モネやルノワールら印象派の作品から色彩や陽光の表現、新印象主義の画家たちから点描技法を学んだ。この時期のものとして補色を使った40点あまりの花の習作が残されており、数多く描いた自画像では赤と緑を用いる試みも。そしてアルルに移り、描かれたのが《夜のカフェテラス(フォルム広場)》。ゴッホ自身の言葉で言えば「黒のない夜の絵」。明るく照らされたテラスとコバルトブルーの夜空の鮮やかな対比。瞬く星は中心を黄色、周りはピンクや緑を使って描かれている。

新印象派の影響を受けた点描の筆使いが見られる。壁には赤と緑など補色が用いられている。

パリ時代に多く描かれた自画像。頭部は茶系に赤と白、背景に緑、青を用い、補色を意識していることがわかる。

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「星のモチーフはゴッホにとって“希望”の象徴でした。この頃の手紙に、夜空の星は仲間の群像のようだと綴られています。夜空の星々と仲間の姿を重ねていたようです」

仲間を思い、夜空を見上げるゴッホの眼差しに私たちのそれがいつのまにか重なる。そして後半生、次章への期待もまた膨らんでくる。

information

大ゴッホ展 夜のカフェテラス

上野の森美術館 東京都台東区上野公園1-2 5月29日(金)~8月12日(水)9時~17時30分(金・土・祝日は~19時。入館は閉館の30分前まで) 会期中無休 一般2800円ほか TEL. 050-5541-8600(ハローダイヤル 9時~20時)

取材、文・松本あかね

anan 2496号(2026年5月20日発売)より
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No.2496掲載

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