意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「反DEI」です。


DEIか反DEIか。二択ではなく、対話の場作りを。

トランプ大統領は就任初日に連邦政府のDEIプログラムの廃止を命じる書類にサインをしました。「DEI」とは、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)の略語。バイデン政権では、採用や昇進などの雇用機会において、人種や性別、障がい、出身地などに関係なく機会均等であるべきと謳っていたのです。ところが、マイノリティを尊重することにより、逆にマジョリティ側が排除されることになると、DEIに対して嫌悪感や不満を抱く人が増えていきました。

DEIのもとになっている考え方で、人種、宗教、性別、年齢などによる差別や偏見を含まない表現を用いることを「ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)」といいます。ポリコレ/反ポリコレ、DEI/反DEIのムーブメントはこの10数年、振り子のように繰り返されています。ポリコレが広く謳われたのは’90年代以降ですが、2000年代になり、米国の産業の中心だった工業地帯は衰退し白人の失業者が増え、「忘れられた人たち」と呼ばれました。移民排斥のムードが高まり、アメリカ・ファーストを掲げる第1期トランプ政権が誕生。次の大統領選では反ポリコレのトランプ支持者による連邦議会襲撃事件が起きました。ポリコレを実践するバイデン政権になっても経済格差は広がるばかり。マジョリティ側が自分たちは不利益を被っているかもしれないと感じるようになり、再び反ポリコレムードが強まりました。

今回、トランプ大統領は多様性と包摂性を尊重する民間企業に対しても、反DEIの強い姿勢を示したため、メタやグーグル、アマゾン、マクドナルドなどの大企業が次々とDEIプログラムを見直すことになりました。GAFAで唯一スタンスを変えなかったのは、アップルです。ただ、これらの見直しも企業防衛のためのもの。DEIも反DEIも政治家たちの票獲得のための装置になってはいないでしょうか。

対立しても解決には至りません。時間はかかりますが、マジョリティ側もマイノリティ側も互いに不安や不満を共有し、接点を広げていくような対話が必要なのだと思います。

Profile

堀潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan2441号(2025年4月2日発売)より
Check!

No.2441掲載

体感カルチャー 2025

2025年04月02日発売

今年大注目のジャングリア沖縄や、開催が迫る大阪・関西万博など最新の没入型の施設やイベントを紹介する「体感カルチャー」特集。塩野瑛久さん、乃木坂46の池田瑛紗さんが最新体験をレポートするほか、大人もハマるシルバニアファミリーの特別企画や“べらぼう”的浅草案内も。

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